想望手記

近代詩の朗読と詩の解説。中原中也さん等。

想望手記

帰郷 - 中原中也|詩の解説

www.youtube.com

 

 中原中也さんの詩、"帰郷"を朗読しました。私がこの詩を読み解いて書き起こすよりは、「お前は何をしてきたのだと……」の一節について、詩の読み手が胸に手をあてて振り返ってみるのが良いと感じています。恐らくこの詩は、そういったこちら側に対する強い問いかけがあるのだと私は思っています。

 

 いえ、それだけの解説ですと、闇の魔力で消されてしまいそうなので、私なりに少しだけ書いてみます(何)。

 

 私がこの帰郷に触れて感じたのは、故郷から旅立った日の出来事や決意、それ対して今の自分は、恥じることなく生きているのだろうか、という問いかけです。そのように私は、真っ直ぐに歩けているのだろうかという自問に、自分自身を見つめ直す機会を与えてもらったような気持ちになれるのです。私はこの詩を読む度に、いつもハッとさせられています。

 故郷とは、生まれ育った場所だけではなく、何かの出発点とも解釈できます。「さやかに風も吹いている」のは、純朴で無垢なる始まりがあるからです。最後の行の「吹き来る風」とは世間のことでありましょうか。その中で生きている私達は、この風の向き次第であるようにも思えるのです。故里をいつも懐かしんでいた中也さんの姿をこれからもずっと追い続けていきたいです。

 

 最後まで読んでくれてありがとうございました。私の故郷は、緑と川と、お腹いっぱいのプリンでありました。貴方の故里では、今もさやかに風は吹いていますか? 心を込めて朗読しました。よければきいてください。それでは又。

 

帰郷ききょう

 

はしらにわかわいてゐる

今日きょう天気てんき

    えんしたでは蜘蛛くも

    心細こころぼそさうにれてゐる

 

やまでは枯木かれきいき

あゝ今日きょう天気てんき

    路傍みちばた草影くさかげ

    あどけないかなしみをする

 

これがわたし故里ふるさと

さやかにかぜいてゐる

    心置こころおきなくかれよと

    年増婦としまひくこえもする

 

あゝ おまへはなにをしてたのだと……

かぜわたし

 

山羊やぎうたより