想望手記

統合失調症と共に日々を生きていくブログです。中原中也さん他、近代詩の朗読も配信しています。

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帰郷 - 中原中也|詩の解説

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 中原中也さんの"帰郷"を朗読しました。この詩を丁寧に読み解いて文章にすることが、何だか不思議としたくない心向きにあります。私がここであれこれと解説するよりは「お前は何をしてきたのだと……」の一節について、読み手が胸に手をあてて振り返ってみるのが良いと感じています。恐らくこの詩はこちら側に対する強い問いかけのある詩だと私は思っています。

 

 いえ、それだけですと闇の魔力で消されてしまいそうなので私なりに少しだけ解説してみます(何)。

 

 私がこの帰郷に触れて感じたのは、故郷から旅立った日の出来事や決意、それ対して今の自分は恥じることなく生きているのだろうかという問いかけです。そのように私は真っ直ぐに歩けているのだろうかという自問に、自分自身を見つめ直す機会を与えてもらったような気持ちになるのです。私はこの詩を読む度にいつもハッとさせられています。

 故郷とは生まれ育った場所だけではなく、何かの出発点とも解釈できます。「さやかに風も吹いている」のは純朴で無垢なる始まりがあるからです。最後の行の「吹き来る風」とは世間でありましょうか。その中で生きている私達はこの風の向き次第であるようにも思えるのです。故里をいつも懐かしんでいた中也さんの姿をこれからもずっと追い続けて生きたい想いです。

 

 最後まで読んでくれてありがとうございました。私の故郷は緑と川と、お腹いっぱいのプリンでありました。貴方の故里では今もさやかに風は吹いていますか? 心を込めて朗読しました。良ければきいてください。それでは又。

帰郷ききょう

 

はしらにわかわいてゐる
今日きょう天気てんき
    えんしたでは蜘蛛くも
    心細こころぼそさうにれてゐる

 

やまでは枯木かれきいき
あゝ今日きょう天気てんき
    路傍みちばた草影くさかげ
    あどけないかなしみをする

 

これがわたし故里ふるさと
さやかにかぜいてゐる
    心置こころおきなくかれよと
    年増婦としまひくこえもする

 

あゝ おまへはなにをしてたのだと……
かぜわたし

 

山羊やぎうたより