――或る日の森の中。 囁くような風が吹いて、見上げる樹々は揺れて、青葉の隙間から陽が差し込んで来ました。小鳥たちの声が森に調和すると、僅かに果物の匂いが一面を覆いました。 この森は数多の生命で溢れています。新緑も、昆虫も、人間も、皆同じ質量の…
私はネットサーフィンが好きです。マウスを片手にぽちぽちと気がつくと、30分以上も経過していてびっくりすることがあります。インターネットは調べ物をするのに便利ですが、未知なる探索という大冒険が待っている場所でもあるのです。それは広大な電子の…
久しぶりに物語を創作をしてみようと思い、パソコンのモニターとにらめっこをしているのですが、書いては消しての繰り返しで真っ白しろすけの有様です。そもそも私は詩のひとつも書けないのに、物語なんて書けるのかと問われてしまいそうですが、それはかろ…
美容室の匂いが好きです。私の通っている美容室は良い匂いがいっぱいします。その場所は職人さんみたいな男性が一人で経営していて、私はこの美容師さんに髪の一切をお任せしています。お店と出会ったきっかけは、とある私の失敗で髪がひどく傷んでしまい、…
夕暮れの浜辺にて。私がその少年に心を奪われたのは一刻の出来事でした。缶コーヒーを片手にぼんやりと海を眺めていると、何かを拾っては海に投げている少年がいました。最初はそれほど気になりませんでしたが、あまりにも長い間そうしているので、声をかけ…
米子 - 中原中也 二十八歳(にじゅうはっさい)のその処女(むすめ)は、肺病(はいびょう)やみで、腓(ひ)は細(ほそ)かつた。ポプラのやうに、人(ひと)も通(とお)らぬ歩道(ほどう)に沿(そ)つて、立(た)つてゐた。 処女(むすめ)の名前(なま…
ここだけの話ですが、私は中原中也さんの生まれ変わりです。なんて詩のひとつも書けないくせに、私がそのような空想を信じているのは、大好きな人になりたいという至極単純な想いからでした。少年の頃、祖父に買ってもらった仮面ライダーのベルトを使って変…