想望手記

近代詩の朗読と詩の解説。中原中也さん等。

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妹よ - 中原中也|詩の解説

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 中原中也さんの詩、"妹よ"を朗読しました。普段は、解釈を文字に起こすことはないので、こうしてブログを通して読み解いていく時間が私は好きです。拙い解説となりますが、どうぞ最後までよろしくお願いします。

 

 正当と書いて"あたりき"と読むのは、とても中也さんらしいと思いました(あたりきとはあたりまえを洒落て言っています)。その派生で"あたぼう"等もありますよね。職人さんが「あたぼうよ!」と言ってるのをきいたことがありませんか。いえ、私の世代だけでしょうか……。

 いもというのは、親しい女性や恋人等を指す言葉ですが、この詩を何度か繰り返し読んでいる内に、中也さんの大好きな宮沢賢治さんが浮かんできたのです。恋人だった泰子さんが中也さんを置いて、小林秀雄さんのもとへと去った後、しばらくして手に取った詩集が宮沢賢治さんの"春と修羅"でした。これは想像ですが、中也さんは宮沢賢治さんの妹と泰子さんを重ねて、この詩を書いたのではないでしょうか。

 

 最後まで読んでくれてありがとうございました。中也さんならどのように朗読するのだろうかと、いつも考えています。心を込めて朗読しました。よければきいてください。それでは又。

 

いもよ - 中原中也

よる、うつくしいたましいいて、

  ――かのじょこそ正当あたりきなのに――

よる、うつくしいたましいいて、

  もうんだつていいよう……といふのであつた。

 

湿しめつた野原のはらくろつちみじくさうえ

  夜風よかぜいて、 

んだつていいよう、んだつていいよう、と、

  うつくしいたましいくのであつた。

 

よる、みそらはたかく、かぜはこまやかに

  ――いのるよりほか、わたくしに、すべはなかつた……

 

山羊やぎうたより