中原中也さんの有名詩、"朝の歌"を朗読しました。この作品は、山羊の歌に納められた詩の一編であり、たった十四行を書くのにこれほどの手数がかかるものなのかと、自分自身でがっかりとされている様子が『詩的履歴書』に書かれていました。その中で、方針立つとも書かれているので、中也さんはきっと確信と自信をもって、この作品を小林秀雄さんに読んでもらったのだと思いました。
主題は、喪失です。私は一人で在りました。朝を知らせてくれる人もいなければ、小言をいうものもおらず、誰も私を諌めたりはしないようです。それでも世界は動くことを怠らず、私は過ぎていく時間をただ見つめるばかりでした。そうして失ったさまざまなゆめが、うつくしき夢となるのを待っているのです。と、私は読み解きました。
何より、この朝の歌には喪失だけではなく、希望が込められています。全てを失った先の未来を暗示しています。詩人として生きたいからこそ、このような状態であっても、私は詩を書くのだという想いが強く描かれているこの作品は、中也さんの残した詩の中でも特別であり、夭折の天才詩人、中原中也の代表作と言えるでしょう。
私は中也さんの詩の中でも、朝の歌が特に好きです。いえ、ただの好きとは少し違う気がします。その少しが何とも言い表せなくてもどかしいのですが、朗読していると透明な腕の中にいるようで、心穏やかな気分になれるのです。だから私は、何度も言葉を追いかけます。私が中也さんを想うように、中也さんの詩も誰かを想い続けているのでしょう。
詩というのは、感じたままを素直に受け取るのが一番良いと思います。正しい読み解きなんて存在しません。人それぞれです。逆にこれが正しいのだと言われると、私は途端に苦しくなってしまいます。だから私は感じるがままに、中也さんの世界に浸かっています。
最後まで読んでくれてありがとうございました。心を込めて朗読しました。良ければきいてください。それでは又。
うしなひし さまざまのゆめ、
ひろごりて たひらかの
うつくしき さまざまの