萩原朔太郎さんの"竹"を紹介します。この詩は以前記事にした悲しい月夜と同じ詩集『月に吠える』に収められています。竹という真っ直ぐで強く神々しさすら感じる植物に対して、朔太郎さんは何を重ね描いたのでしょうか。青き炎の幻影とは一体どのようなものであるのでしょうか。私はこの詩からも超近代級の絶望を感じました。
最後まで読んでくれてありがとうございました。それではまた。
光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるえ。
かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。
○
みよすべての罪はしるされたり、
されどすべては我にあらざりき、
まことにわれに現はれしは、
かげなき青き炎の幻影のみ、
雪の上に消えさる哀傷の幽霊のみ、
ああかかる日のせつなる懺悔をも何かせむ、
すべては青きほのほの幻影のみ。