想望手記

統合失調症と共に日々を生きていくブログです。中原中也さん他、近代詩の朗読も配信しています。

想望手記

悲しい月夜 - 萩原朔太郎|詩の解説

 萩原朔太郎さんの処女詩集「月に吠える」を読み耽る夜半の秋です。その中でも特別心に沁みたのが悲しい月夜でした。透明な音のリズムに肉眼では捉えることのできない影、唄っている言葉はずしりと重く、心の脆弱な私に大真面目に語りかけてきます。月は希望でしょうか。大好きです。

 口語で紡がれた朔太郎さんの自由なる詩は、当時はとても新鮮で何より新時代を感じさせたと思います。朔太郎さんの作風はこの詩集で確立しています。最後まで読んでくれてありがとうございました。それではまた。

 

かなしい月夜つきよ
ぬすつといぬめが、
くさつた波止場はとばつきえてゐる。
たましひがみみをすますと、
陰気いんきくさいこえをして、
いろいむすめたちが合唱がっしょうしてゐる、
合唱がっしょうしてゐる、
波止場はとばのくらい石垣いしがきで。
 
いつも、
なぜおれはこれなんだ、
いぬよ、
青白あおじろいふしあはせのいぬよ。
「月に吠える」より