私は、統合失調症を発症してから投薬開始までの記憶がほとんどありません。このブログの体験記に書いてある所々の出来事は、わずかながらに覚えていましたが、薬を飲み始めるまでの20年間の出来事が、A4用紙一枚程度で書けるくらいしか思い出せないのです。
発症した日から、長い年月を経て、悪夢が始まった部屋に戻っていた私を精神病院に連れて行ってくれたのは、地域の福祉団体でした。私はとある晩、交通量の多い道路に立って、木の棒を振って交通整理をしていたことがあったみたいで、そのことがきっかけとなり(警察に保護されました)、精神科への通院を始めることになりました。
投薬開始直後は、小学生の頃にタイムスリップをしたかのように感じて、私はひどく戸惑っていました。そうして服薬を続けている内に、自分という意識の輪郭がはっきりとしてきて、それは長い間、誰かに奪われていた人生が返ってきたようでもありました。その後、鏡に映っている未来の自分を眺めながら、あの悪夢から解放されたことがわかると、私はようやく安堵したのでした。
その後、色々な人と関わっていく内に、私は少しずつ社会というものを理解していきました。それと同時に、世間の激動にも揉まれて、少年はいつしか青年となり、青年は瞬く間に壮年となり、私の精神は多くの剃刀に身を投じながら、かさぶたのない傷跡を作っていきました。故に人生経験といった意味では、この記事を書いている私は10代のままな気がしています。その程度の経験しか積めていないので、これからもいっぱい勉強して、多くを学んでいけたらと思っています。
空白の20年間を悔やむことは当然ながらありますが、あの霧のかかったような生活から帰ってこれたのだから、私は生還者なのだと思うようにしたのです。この現実は紛れもない私の人生であり、逃げ場など何処にもないのです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。服用している薬の名前や量を公開はできませんが、お薬は偉大であると心から感謝しています。実際、この薬がなければ、私は家の外に出ることも出来ないのです。私はこの先、秒針が壊れるその日まで、この薬を飲み続けるのでしょう。それでは又。