先日、とある中華料理店で
注文をしてから、料理を待っている間のそわそわした気持ちは、「今日のデートはいつもとは違う服装で行きますね」と、未来の恋人からメールが届いたような期待感でいっぱいになります。
私が色々と想像を膨らませながら、お昼時のバラエティ番組をぼーっとみていると、「お待たせしました」とテーブルの上に天津飯がやってきました。それはまるで、お皿に閉じ込められた満月のようでした。ロマンティックで、ファンタスティックです。かぐや姫の手を引っ張って月の裏側に連れていき、ここなら誰も見ていないからビンタをしてほしいと迫るかの如く、私は熱々のあんと、ふわっふわの卵にレンゲを差し込み、いただきますと口の中に天津飯を運び入れました。
その瞬間、私は天にも昇る心地となり(ああ、あの時の感動をどうにかして貴方に伝えることが出来たら良いのですけど)、おそらく私は、このお店の天津飯を食べる為に生まれてきたのではないか思うほどに、その運命を決定づけられる美味しさに震えてしまったのです。そして、大満足で昼食を終えてお店を出ると、この想いを誰かに伝えなければならないと思い立ち、ちょうど暇そうに歩いていた親しいお嬢様に話しかけたのでした。
私は早速、天津飯が天上界の食べ物であったことを伝えると、「あー、あのお店の天津飯? 私も食べたことあるけど、あれって白ごはんオムライスでしょ。それにただあんがのってるってだけで、原価も安そうだし、わざわざ注文する程のものでもなくない? 天津飯を頼むくらいだったら同じ値――――」、ああどうか、この者が前に至高の味だと言っていた、唐揚げ定食の唐揚げたちが、何かの間違いで一つ少なく出されますように、何卒なにとぞ人誅をお与えくださいと、願うばかりの昼下がりとなったのです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。わたくし、天津飯ってあまり食べたことがなかったので存じ上げなかったのですが、他のお店ではカニカマ(本物かも?)が入ってたり、グリンピースやネギが入ってたりするみたいですね。ああ、この記事を書いていたらまた食べたくなってきました。たしかにシンプルだけど、私にとっては魅惑の味なのです。それでは又。