想望手記

統合失調症と共に日々を生きていくブログです。中原中也さん他、近代詩の朗読も配信しています。

想望手記

世界の裏側へ

 空が剥がれて山には錆が浮き、川が逆さま映る日があります。それは何もない世界が存在しているからです。突然に音もなく私を侵食して気の滅入る場所へといざなおうとしているのです。何もない世界というのは特別に恐ろしくていつまで経っても慣れませんでした。

 そこでは秒針の刻む59回を1回として数えますし、それが531回でも171回でも1回として数えられます。そうして気がつくと見慣れた天井が私を見下ろしていて、その度に私は一体"どちら"に居るのだろうと困惑するのです。

 こういう日に涙が流れないのは私が此処にないからでしょう。私は時々失くなるのです。そういう時は何をやってもいけません。一人でぼんやりと電球を見つめているのが良いのです。蛍光灯の光はひどく苦手です。頭痛がするくらいに苦手なので白熱電球は優しい発明だと思っています。

 

 眼の美しい人はたくさんの涙を流しているからだと私は思います。そういう人は決まって自分のことを泣き虫だと悲観しています。まるで泣くことが悪いかのように申し訳なさそうにしています。そうではないといくら伝えても、私の声はきっと届かなくて、心の美しい人の悲しみを止めることはできないのです。私もいつかあのような眼になりたいと思います。

 最後まで読んでくれてありがとうございました。それでは又。