ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、
しらじらと雨に洗はれ、
ヌックと出た、骨の尖。
それは光沢もない、
ただいたづらにしらじらと、
雨を吸収する、
風に吹かれる、
幾分空を反映する。
生きてゐた時に、
これが食堂の雑踏の中に、
坐つてゐたこともある、
みつばのおしたしを食つたこともある、
と思へばなんとも可笑しい。
ホラホラ、これが僕の骨――
見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。
霊魂はあとに残つて、
また骨の処にやつて来て、
見てゐるのかしら?
故郷の小川のへりに、
半ばは枯れた草に立つて、
見てゐるのは、――僕?
恰度立札ほどの高さに、
骨はしらじらととんがつてゐる。
中原中也さんの骨を朗読しました。私はこの骨という詩から、中也さんの激しい自嘲を感じて苦しくなりました。骨を見ている自分を書くという表現は、非現実的に感じますが、私は何だかそうではない気がするのです。自分なりに答えを出してから録音してみました。ご視聴いただければ幸いです。
そういえば今回、中也さんの大好きな「三つ葉のおひたし」を読めて嬉しかったです。実際に口にしてみたいのですが、なかなか機会がありません。ユーチューブの方、ご視聴、評価、コメント等、いつも本当にありがとうございます。とても励みになっています。これからも少しずつ前進していきますので、どうぞよろしくお願いします。最後まで読んでくれてありがとうございました。それではまた。
中原中也とは
中原中也は、日本の詩人・歌人・翻訳家。旧姓は柏村。代々開業医である名家の長男として生まれ、跡取りとして医者になることを期待され、小学校時代は学業成績もよく神童とも呼ばれたが、8歳の時、弟が風邪により病死したことで文学に目覚めた。中也は30歳の若さで死去したが、生涯で350篇以上の詩を残した。
生年月日: 1907年4月29日
出生地: 下宇野令村
死亡日: 1937年10月22日, 神奈川県 鎌倉市
配偶者: 上野孝子 (1933年 - 1937年)
両親: 中原フク、 ナカハラ・カンスケ
学歴: 東京外国語学校 (1931年–1933年)
「中原中也 - ウィキペディア」より引用