そら ね ごらん
むかふに霧にぬれてゐる
蕈のかたちのちひさな林があるだらう
あすこのとこへ
わたしのかんがへが
ずゐぶんはやく流れて行つて
みんな
溶け込んでゐるのだよ
こゝいらはふきの花でいつぱいだ
(まちはづれのひのきと青いポプラ)
霧のなかからにはかにあかく燃えたのは
しゆつと擦られたマツチだけれども
ずゐぶん拡大されてゐる
スヰヂツシ安全マツチだけれども
よほど酸素が多いのだ
(明方の霧のなかの電燈は
まめいろで匂もいゝし
小学校長をたかぶつて散歩することは
まことにつつましく見える)
宮沢賢治さんの詩を朗読しました。宮沢さんの詩はどれも難しい印象ですが、この「林と思想」と「霧とマツチ」は、胸にじわっと染み込んでくる感じがして好きです。不思議と見たこともない景色が浮かんでくるのです。
二作とも「一九二二、六、四」と日付がありますので、この詩は今からちょうど百年前に書かれたものですよね。時代をこえて人々の心に明かりを灯し続ける宮沢さんの作品は、これからもずっと語り継がれていくことでしょう。その心象スケッチにこうして触れることが出来て私は幸せ者です。
最後まで読んでくれてありがとうございました。それではまた。
宮沢賢治とは
宮沢賢治は、日本の詩人、童話作家。仏教信仰と農民生活に根ざした創作を行った。作品中に登場する架空の理想郷に、郷里の岩手県をモチーフとしてイーハトーヴと名付けたことで知られる。
生年月日: 1896年8月27日
出生地: 岩手県 花巻市
死亡日: 1933年9月21日, 花巻町
影響を与えた人: 萩原朔太郎、 ハンス・クリスチャン・アンデルセン、 山村暮鳥
学歴: 盛岡高等農林学校
「宮沢賢治 - ウィキペディア」より引用