想望手記

朗読家丨国立和歩のブログです。中原中也、高村光太郎等、近代詩の朗読を配信しています。

想望手記

朝の歌 - 中原中也|朗読

朝の歌

天井に 朱きいろいで
  戸の隙を 洩れ入る光、
鄙びたる 軍楽の憶ひ
  手にてなす なにごともなし。

小鳥らの うたはきこえず
  空は今日 はなだ色らし、
倦んじてし 人のこころを
  諫めする なにものもなし。

樹脂の香に 朝は悩まし
  うしなひし さまざまのゆめ、
森竝は 風に鳴るかな

ひろごりて たひらかの空、
  土手づたひ きえてゆくかな
うつくしき さまざまの夢。

 最近、読書の時間が増えてきて頭の中が慌ただしいです。それもそのはず、私は一つのことをぼんやりと集中してやる人間なので、ぽいっとサバンナに放り出したのなら、恐らく一番に捕食されるタイプと言えます。

 何かをマルチタスクにこなせる程、私という人間は出来ていないのです。なので、無理に意識を外に向けようと思ってはいけないのです。どうせどちらにも定まらず、どちらも中途半端になるのを知っているからです。

 本を読んでいる間はその世界の住人になっています。外部からの何かに対して、ぴくりとくらいは反応するのですが、獲物を狙うライオンにそーっと近づかれたらきっと気づきません。私がつくづく思うのは、この世界が平和で良かったと、そう考えると同時に自分の平和を申し訳なくも感じています。そのようなどうしようもないことを巡らせて、今日も読書に没頭するのです。

 中原中也さんの「朝の歌」を朗読しました。朗読するにあたり、何度も何度も読み込みました。難しいです。中也さんはこの詩を書いて「自分の詩の方針が定まった」と言われたそうです。

 詩というのは、感じたままを素直に受け取ることが正しい読み解きです。そのような気がしています。あれこれと考察しても、結局は最初に感じた印象に戻ってしまうのです。だから私は、感じるままに中也さんが好きなのです。大好きなのです。最後まで読んでくれてありがとうございました。詩の朗読、良ければ聴いてください。それではまた。

 

中原中也とは

中原中也は、日本の詩人・歌人・翻訳家。旧姓は柏村。代々開業医である名家の長男として生まれ、跡取りとして医者になることを期待され、小学校時代は学業成績もよく神童とも呼ばれたが、8歳の時、弟が風邪により病死したことで文学に目覚めた。中也は30歳の若さで死去したが、生涯で350篇以上の詩を残した。

生年月日: 1907年4月29日
出生地: 下宇野令村
死亡日: 1937年10月22日, 神奈川県 鎌倉市
配偶者: 上野孝子 (1933年 - 1937年)
両親: 中原フク、 ナカハラ・カンスケ
学歴: 東京外国語学校 (1931年–1933年)

中原中也 - ウィキペディア」より引用