想望手記

朗読家丨国立和歩のブログです。中原中也、高村光太郎等、近代詩の朗読を配信しています。

想望手記

山月記 - 中島敦|朗読

山月記

どうすればいいのだ。己の空費された過去は? 己は堪らなくなる。そういう時、己は、向うの山の頂の巖に上り、空谷に向って吼える。この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。己は昨夕も、彼処で月に向って咆えた。誰かにこの苦しみが分って貰えないかと。しかし、獣どもは己の声を聞いて、唯、懼れ、ひれ伏すばかり。山も樹も月も露も、一匹の虎が怒り狂って、哮っているとしか考えない。天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己の気持を分ってくれる者はない。ちょうど、人間だった頃、己の傷つき易い内心を誰も理解してくれなかったように。己の毛皮の濡れたのは、夜露のためばかりではない。

 中島敦さんの山月記、その一節を朗読しました。今回の朗読では「口を大きく開ける」ことを意識しながら録音しました。するといつもより、声が前に出ている気がして嬉しくなりました。

 どうしてそのような意識が芽生えたかというと、先日、北勝成先生のワークショップに行ってきたからです。発声や呼吸法、笑顔の練習など、たくさんのことを教えてもらえて楽しかったです。後、狂言を見せていただいたのですが、度肝を抜かれました。物凄く格好良いです。先生すごいです。

 稽古中は「口を開けて!」と何度も注意を受けて、私は口が全く開いていなかったのだとこの日に発覚しました。北先生が毎日トレーニングが大事と言われていたので、今日の朝から鏡と母音を使って口を大きく開ける練習をしています。

 これからも先生方に教えていただいたことを少しでも発揮出来るように頑張っていきます。最後まで読んでくれてありがとうございました。それではまた。

 

中島敦とは

中島敦は、日本の小説家。代表作は『山月記』『光と風と夢』『弟子』『李陵』など。第一高等学校、東京帝国大学を卒業後、横浜高等女学校の教員勤務のかたわら小説執筆を続け、パラオ南洋庁の官吏を経て専業作家になるも、同年中に持病の喘息悪化のため33歳で病没。死後に出版された全集は毎日出版文化賞を受賞した。
生年月日: 1909年5月5日
出生地: 東京都
死亡日: 1942年12月4日, 東京都 東京 1丁目
配偶者: 橋本タカ (1933年 - 1942年)
両親: 中島田人、 中島チヨ
学歴: 東京大学文学部・大学院人文社会系研究科 (1933年–1934年)、 東京大学 (1930年–1933年)、 浜松市立元城小学校
中島敦 - ウィキペディア」より引用