ついこの間、耳栓を買いました。元々ヘッドフォンタイプの耳栓（イアーマフ）は持ってたのですが、これよりももっと外からの音を遮断できないかなという理由です。この耳に押し込むタイプの耳栓をつけてからヘッドフォン型の耳栓をかぶせてみるとそれは驚きました。全てが無いように感じるのです。それがまるで広くて真っ白なキャンパスのように感じたのでした。
私は近くに置いてある本を開いてみました。なんという透明感。繊細に鮮明化された物語の数々は、その世界をより美しく多くの色彩をもって私を迎えてくれました。今風に言うとFull HDから8Kに変わったような衝撃です。読書をする時や書き物をする時はこの耳栓があると便利だと思いました。これは素晴らしいものです。
小学生の頃、授業中にひそひそ話をする同級生がいました。私はそれがとても苦手でした。何故なら授業をする先生の声と、小声でひそひそと話す同級生の声が、同じ音量で聞こえてきたからです。かてて加えて鉛筆で机をこつこつと叩く音、教室の外で体育の授業をしている声など、その全ての音が一定の音量になって聞こえていました。
故に私の頭の中はいつも散らかっていました。それを片付けようとしても何一つ変わることはありません。どれだけ掃除をしても無駄だとわかった私は当時はそういうものだとして受け入れたのです。仕方のないものとして諦めたのです。周りを見ると他の同級生が困っている様子はありませんでした。私だけが異常なのだと私は私が怖くなりました。この事実を決して誰かに知られてはいけない。もし見つかったら何処かに閉じ込められるかもしれない。そのように恐怖していた学校生活でした。
あの頃、聞こえてきた音の音量が本当に一定だったとは思っていません。私は恐らく気になる部分に周波数を合わせて、わざわざそれらを自ら聴きに行っていたのです。つまり気になる部分が多かったので、私はきっと一点集中ができなかったのだと今こうして大人になってからわかるのでした。※音量については成長と共に気にならなくなっていきました。
この度、耳栓によって私が得たものはこの上ないものです。これまでに読んだ物語を全部読み返してみようと思いました。それは中華料理屋さんに入店してからメニューを開くとチャーハンとしか書いていないような、私にとってはそのようなわかりやすい感覚であるのでした。最後まで読んでくれてありがとうございました。それでは又。