朝のことです。カーテンを開けて空を見上げると、重そうな雲が敷きつめられていました。暖かい陽の差し込みを期待していた私は、ふぅとため息ついて、書斎の椅子に腰を下ろしました。
私が一日を始める時の気分は、あの空の機嫌によって、随分と左右されるようです。しかし、晴れていたら良いというわけでもなく、殴りつけるような雨を心底求める朝もあるのでした。
この世界は、思い通りにならないことで溢れています。かといって、それを嘆くことはせず、読書をするのに困らない明るさになった室内を良しとして本を開くのです。そうして皆、自分の思い通りを諦めたり、譲り合いながら生きています。人々は誰一人として、全知全能ではないからこそ、共生できるのだと思うのです。万能な人間なんて、何処にも存在しないのです。
私が特別な人間ではないと知ったのは、小学校一年生の時でした。私は保育園に行く機会がなかったので、友達はなく、外で遊ぶ時はいつも一人でした。一度、近くの公園にいる、同じくらいの歳の集団に混ざって遊んだこともあったのですが、どう接していいかわからずに、集団を飛び出してしまったので、公園の中には入らないようにしていました。それなのに、公園で遊んでいる子供たちが羨ましくて、フェンスに手をかけながら眺めていたりもしました。
私はそのようでしたので、比較対象がなく、いつしか自分は、何でも出来る子供なのだと勘違いをしたまま、近所の小学校へと入学することになりました。学校にいる時間が長くなるにつれて、明らかになっていくのは、クラスには私より、何でも出来る子供がいっぱい存在したことでした。私の得意だったローラースケートだって、みんなとても上手だったのです。
そうして集団生活を知ることで、私は自分が特別な子供ではないのだと理解したのでした。それからというもの、私は私のペースで参りますので、お先にどうぞと、超絶マイペースな人間に変化していきました。それが進化なのか、退化なのかはわかりませんが、誰かと競争をしないことは、私にとって大切な生き方となりました。
最後まで読んでくれてありがとうございました。これからも森の奥に咲く花のように静かに生きていきたいです。私は灰色の花。何でもないものです。それでは又。