想望手記

朗読家丨国立和歩のブログです。中原中也、高村光太郎等、近代詩の朗読を配信しています。

想望手記

随筆

老いていく日々の中で

これは、私が死んだ後の話になるのですが、例えばこのはてなブログさんが100年先も存在していたとして、或いはユーチューブさんが1000年先でも保管されていたとして、その時代に生きる人々がふと私の文章を読んでくれたり、アップロードしている朗読を聴いて…

詩の朗読と神の声音

この世界で唯一無二の文学を作り出すこと。それは恐らく全知全能の神として、世界を創造するに等しいことです。当然ながら私には不可能です。もしそれが叶うのであれば、全ての人に笑顔と幸せが訪れる文学を作りたい、と想像するのは雲の上の文学であり、そ…

双月の砂時計

緩やかに流れていく世界の中では、時間を意識することはないのだけれど、何か予定が近づいてくると少し話が変わってきます。それの時は、目の前に砂時計を置かれたような気分になるのです。 二つの透明な月を繋ぐ管に、刻々と流れていく時の砂、経過時間を計…

秋の終わりと落葉

ついに秋が終わりました。世間ではとうに終わっていたのですが、私の秋が終わったのです。秋が終わると、冬が降りてきました。そう確信したのは、落ち葉が螺旋階段を昇っていくのを見たからです。視界の端からぱりぱりとした、血液の通っていない落ち葉が舞…

日曜日の朝のこと

どうやら何事もなく目が覚めて、いつもの呼吸が始まりました。ぼんやりと天上を眺めていると、段々と世界が鮮明に見えてきます。過去の記憶が一瞬で読み込まれて、私という人間が始まるのです。 私の思い通りの光が窓から差し込んでいないことがわかると、瞼…

競争の逃亡者

例えばそう、私は椅子取りゲームが嫌いでした。ほら、あの音楽が鳴って、急に音楽がぴたんと止まって、皆で一斉に足りない椅子を取り合うあのゲームです。椅子に座れた人がいて、椅子に座れなかった人がいる。その構図に得体の知れない気味悪さを感じていま…

朗読家としての始まり

朗読についてのエッセイです。貴方がこの記事を読まれる前に、最初にお伝えしたいことがあります。私は朗読について、特別な訓練を受けた人間ではありません。故に技術的なことを一切記すことができないのです。かてて加えて、演技や声のプロフェッショナル…

一度だけ追いかけた夢

私は月に何回かオートバイに乗っています。バイクは車と違って四季を肌で感じるので、当然の如く夏は暑くて冬は寒いです。やたらにスピード出したりせず、景色を見ながらのんびりと走行するのが好きです。私は過去に、一度だけ夢を追いかけたことがありまし…