空が剥がれて山には錆が浮き、川が逆さま映る日があります。それは何もない世界が存在しているからです。突然に音もなく私を侵食して気の滅入る場所へと誘(いざな)おうとしているのです。何もない世界というのは特別に恐ろしくていつまで経っても慣れませ…
空気のように存在していれば厄介事に巻き込まれることはない。そう思っていた時期がありましたが社会というものに溶け込むとそれが一変しました。私は自己を主張をせずに就業規則を厳守し、言われたことを機械のように黙々とやっていたのです。 毎日が同じよ…
カーテンを開けると灰色の空が映っていました。責任のない風たちは木々を揺らして、ひゅうひゅうと音を立てて走り過ぎていきます。薄墨の日。あれは笑ってもいないし、ましてや怒ってなどなく、少しばかりの悲しみを含みながらじっと私を見つめているのでし…
www.youtube.com 中原中也さんの"妹よ"を朗読しました。一人で詩集を開いて朗読する時はこのように解釈を文字に起こさないので、普段の頭の中では散らかっているのかもしれません。なのでブログを通して書き起こしていく時間が私は好きです。拙い解説となり…
私がそのお声を知ったのは、cluster(クラスター)という仮想空間でのことでした。パソコンにソフトをインストールをしたばかりで、ヴァーチャルリアリティやメタバースなんて右も左も分からない時でした。 ロビーで迷子になっていた私の耳に不意にきこえて…
いつも雨が降っています。なんてあまりに物哀しく言うものだから、私は降りそそぐ雪片を思わず手の平で受け止めたのです。それはあまりにも小さく繊細であり、時折冬の星座のように綺羅びやかに輝いていました。たとえこの結晶が溶け出しても頬を伝ったりは…
キッチンはいつも同じ色をしているから好きです。しかしシンクに熱いものを置いてしまうと、たちまち火傷してしまう感覚が皮膚全体に伝わってきて、それはもう全身に鳥肌が立ってしまうので、あらかじめ水を流してから置くようにしています。そうしないとシ…